2020年4月9日木曜日

サザンオールスターズ 80年代の名曲ベスト10

『タイニイ・バブルス』リマスタリング盤 サザンオールスターズ
『タイニイ・バブルス』1980年

  評価を不動のものにした80年代のサザン


「勝手にシンドバッド」で衝撃的なデビューを果たしたサザンオールスターズが、日本を代表するロックバンドとして評価されるようになったのは、精力的にアルバムをリリースしていた80年代のことです。

数々のヒット曲を生み出し続けているのは今も変わりませんが、名シンガーソングライター桑田佳祐がその才能を遺憾なく発揮するようになった、80年代の名曲ベスト10を選んでみました。


第10位:「旅姿六人衆」


静かに始まってサビで盛り上がり、ドラマチックなギターソロが入って最後に余韻を残して終わるオーソドックスなバラード。町から町へとツアーに明け暮れる人気バンドの姿が目に浮かびます。

6人だった頃のサザンを思い出すと聴く人には感慨深いものがあり、メンバーにとってはホロ苦いような甘酸っぱいような思いがあるのかもしれません。

ピアノのリードで♪ラララ…とフェイドアウトしていくラストは、ビートルズの「ヘイ・ジュード」を意識しているような気がします。桑田佳祐の絶妙に嗄れた声には、バラードがよく似合いますね。

収録アルバム:綺麗


第9位:「私はピアノ」


桑田流歌謡曲の傑作で、高田みづえがカバーしてヒットした名曲。タイトルの通りピアノが主役のアレンジは、終わった恋を思う乙女心を表現して秀逸です。

70年代から80年代の洋楽に親しんだ世代は、歌詞に出てくるラリー・カールトンやビリー・ジョエルの名前を聴いてニヤリとするでしょう。

原由子のボーカルにはまだ少し青さと硬さが残っていますが、これはこれで味があっていいなと思います。途中に入るハラボーと桑田佳祐の掛け合いはサザンらしいお遊びです。

収録アルバム:タイニイ・バブルス


第8位:「DJ・コービーの伝説」


裸の男が波間にダイブするというジャケットで「何これ?」と思わせてくれたアルバム『Nude Man』のトップを飾るカッコいいロックナンバー。 

洋楽を紹介する人気番組「ベストヒットUSA」や、英語ペラペラでお馴染みの”コービー”こと小林克也に捧げた曲です。

英語が多めに混じった歌詞は小林克也やウルフマン・ジャックなど往年の人気DJをイメージさせると同時に、ラジオで洋楽ロックやポップスなど様々な音楽に親しんだであろう桑田佳祐の少年時代も想像させてくれます。

収録アルバム:Nude Man


『Nude Man』リマスタリング盤 サザンオールスターズ
『Nude Man』1982年


第7位:「シャボン」


可愛らしいタイトルですが、どこか寂しい雰囲気のある曲です。漂うシャボン玉の表面に過ぎ去った思い出が映っているような、そんな感じがいいですね。

歌詞の中にはサザンの曲ではお馴染みの江ノ島が出てきます。ホームグラウンドに対する愛情も垣間見えて、更にこの地名が切なさと結びついているところも泣かせます。

原由子のボーカルは、「私はピアノ」に比べるとリラックスしているように感じます。日本を代表するミュージシャンの旦那さんが書いた素敵な曲を、学生時代からのバンド仲間でもある奥さんが歌うという、羨ましくも微笑ましい二人の関係。

収録アルバム:人気者で行こう


第6位:「メロディ(Melody)」


2枚組でリリースされた野心作『KAMAKURA』に収録されたバラード。今では想像しにくいのですが、MVにはサザンに相応しいとは思えない、笑わない明石家さんまが登場して「ん?」と思わせてくれました。

 宙を漂うようなイントロには「ミス・ブランニュー・デイ」にも通じるテクノポップな雰囲気を感じます。桑田佳祐のお家芸でもある英語混じりの歌詞と、切ない響きのあるややハスキーなボーカルは何度聴いてもいいなと思います。

普通バラードにサックスの間奏が入ると情熱的で切ないメロディーで盛り上げるものなのですが、この曲では敢えて歌わないシンプルで先鋭的なメロディーを奏でているのが新鮮に感じます。

情感を込めて歌う桑田佳祐のボーカルは相変わらず魅力的で、初期サザンの集大成ともいえるアルバム『KAMAKURA』の中でひときわ光るのがこの曲です。

収録アルバム:KAMAKURA


第5位:「匂艶 THE NIGHT CLUB」


ちょっとセクシーでギラギラした雰囲気で、身も心も踊りだすようなナンバー。デビュー曲の「勝手にシンドバッド」もそうでしたが、バンド名からも連想できるようにお祭り騒ぎこそ元々サザンが得意とするところです。

もちろんただ賑やかなだけではなく、ハートに突き刺さるようなメロディーラインを紡ぎ出すのが桑田佳祐の才能で、匂艶を”にじいろ”と読ませても違和感はありません。めくるめく世界に誘うような言葉遊びにもセンスを感じます。

 ミラーボールと原色の光に照らし出されたダンスフロアに響くサザンのロックは、ブラスやハンドクラップの使い方も効果的です。音楽好きな若者の心を浮き立たせ、男と女の本能を刺激する媚薬のような名曲。

収録アルバム:Nude Man


『綺麗』リマスタリング盤 サザンオールスターズ
『綺麗』1983年

 

第4位:「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」


テクノな雰囲気で始まるオープニングにシンプルなベースと気持ち良く響くドラム、鋭いギターの音が重なって気分が盛り上がるイントロのカッコ良さ。

Aメロのシンプルな音の繰り返しと、上手くメロディーに乗った歌詞がもたらす高揚感に桑田佳祐のセンスが光るナンバーです。高ぶる気持ちを鎮めるようなストリングスや、ワンポイントで入るアコースティックギターのアレンジも見事。

ノリの良いリズムはノリの良い時代だった80年代とシンクロして、次々と繰り出される歌詞は浮かれた世の中の雰囲気に流される女の子をシニカルな視点で描いています。当時の最先端を行く日本のロックがそこにはありました。

収録アルバム:人気者で行こう



第3位:「夏をあきらめて」


楽しいはずの海辺のデートが、雨のせいで夏の終りの感じになってしまうという情景が目に浮かびます。ホットなはずの彼女との関係にも、なんだか寂しく切ない雰囲気が漂ってしまうというショートストーリー。 

サザンの曲には海と恋が付きものですね。この曲にも江ノ島が登場しますが、バンドにとってはいつでも帰ってくることができる場所であり、ファンにとっては安心感のある聖地のような場所なのでしょう。

研ナオコのカバーにもそれなりの良さはありますが、やはりオリジナルにはかないません。今更ですが桑田佳祐の歌の上手さが堪能できる名曲で、桑田流歌謡曲の完成形にして最高傑作だと思います。

収録アルバム:Nude Man


『人気者で行こう』リマスタリング盤 サザンオールスターズ
『人気者で行こう』1984年


第2位:「マチルダBABY」


嵐が吹きすさぶ不穏なオープニングに続いて始まるサックスを使ったイントロで、一気にサザンが構築した冒険の世界に引き込まれます。

愛する彼女を魔物が棲む要塞から救い出すというゲームや映画のようなコンセプトは、忘れていた少年の心を再び蘇らせてくれるようで、色々な事で疲れ気味のオジサンも元気になる曲です。

様々な危機や困難を乗り越えて彼女を無事連れて帰れば、その時はきっと達成感と幸福感に包まれるでしょう。歌の主人公が結局どうなったのかは最後まで不明ですが、ハッピーエンドを期待したいですね。

ゲーム世代だけでなくすべての人に勇気と元気と希望が湧いてくる、最高にカッコいいサザンのロックナンバーです。

収録アルバム:綺麗


第1位:「夕方 HOLD ON ME」


第1位に選んだのは、コンサートの最後に流れたら幸せな気持ちになりそうな「夕方 HOLD ON ME」です。

ブラスを使ったゴージャスなオープニングから既に気分は最高潮で、いきなり高い音で歌い出す桑田佳祐のボーカルも絶好調。稀代のボーカリストが気持ち良さそうに歌うこの曲を聴くと、自然と笑顔になってしまいます。

名曲「You've really got a hold on me」に掛けた言葉遊びや英語を多用した歌詞などサザンらしさも満載で、柔らかいギターの音や間奏のハーモニカ、後半のアカペラなど古き良き時代のポップスを意識したアレンジも楽しめます。

ポップスター桑田佳祐が生み出した、多幸感に包まれる最高の名曲です。

収録アルバム:人気者で行こう


『KAMAKURA』リマスタリング盤 サザンオールスターズ
『KAMAKURA』1985年


80年代になるとデビュー当時のサザンにあった素人っぽさもだんだんと薄れてきて、プロらしくなってきました。

ただし持ち味でもあるユーモアとエロスは健在で、これはアマチュアの頃からそうだったのかもしれません。

また改めて思うのは桑田佳祐のソングライティングやボーカルの才能の素晴らしさと、サザンオールスターズの曲には欠かせない原由子のコーラスの心地良さです。

山下達郎と竹内まりやもそうですが、若い頃に幸せな出逢いをしてその後も共に日本の音楽シーンで活躍を続けているのは素晴らしいことですね。

桑田佳祐の才能は枯れることのない泉のようなもので、これからも名曲をたくさん生み出してくれるだろうと楽しみにしています。


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